メートルと尺と単位の謎

現在、建築や日常で使われる寸法は、一般的にメートル法と呼ばれる単位です。
これは法律でも定められており、取引や計量においても、国際的な基準であるメートル法の使用が義務づけられています。
そのため、建築業界においても図面上の寸法や面積の表示はすべてメートル法で表記され、部屋の広さは「◯㎡」といった形で示されることがほとんどです。

しかし、実際の建築現場に行くと、職人さんたちは
「いっすんごぶ」「さんじゃくごすん」といった表現で、寸・尺・間といった単位を使うことがあります。
これらはかつて日本で使われていた尺貫法と呼ばれる単位です。
では、なぜ古い単位が今も使われているのでしょうか?
それは、人の体に合わせやすく、柔軟性がある単位だからです。


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尺貫法の起源を見てみると、その理由がよくわかります。
メートル法は1791年に定められ、地球の北極から赤道までの子午線の長さをもとに「1000万分の1」として定義されました。つまり、地球を基準にした単位なのです。
一方、尺貫法は人の体を基準にしています。

1寸は、手を広げたときの親指と中指の先の長さ
1尺は、肘から手首までの尺骨の長さ
1間は、人の身長に基づく

このように、人の体の動きや大きさに合わせて作られているため、体感的にしっくりくる寸法なのです。
尺貫法の分かりやすい例が畳です。
畳の大きさは縦6尺、横3尺で表されます。
古くから「立って半畳、寝て一畳」と言われ、このサイズは人が生活する上で最低限必要な広さとされてきました。
この畳の横幅の3尺(約910mm)が、現代の家づくりの基準としても使われています。
設計図を見ると、柱と柱の間や部屋の間取りなど、多くの場合この3尺の倍数で作られていることがわかります。
さらに、浴槽やトイレ、キッチンなどの住宅設備も、3尺に収まるように設計されており、効率的に配置できるようになっています。
また、建材も尺貫法を基準に作られたものが多く流通しているため、メートル法の建材より材料費を抑えやすいというメリットもあります。


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こうして、建築業界では今でも尺貫法が生きているのです。
皆さんの家も、実は尺貫法をベースに作られているかもしれません。
興味がある方は、ぜひ家のいろいろな箇所を測って確かめてみてください。




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木久工務店 久下正義

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